小室博士の最新刊。が、注意しないといけないのは、これが以前に出した本のリニューアル版だということ。元になったのは1981年発刊の【超常識の方法】である。
その知識を持って読まないと大変なことになる。なにせソ連やら国鉄やらが普通に文脈の中に出てくるのだ。著者がボケてしまったのか、編集者の大チョンボなのかとあきれてしまう可能性がある。要注意だ。
内容は数学の論理の解説だ。
数学っと聞いただけで、うわっ、とイヤな顔をする方も多いだろうが(当方も数学は大の苦手だ)本書では数式を使っていないのでご安心あれ。
数式を解く才能と、数学を理解する内容とは違うということ。世間の常識では小難しい数式をすらすらと解ける人が数学のできる人だと思われているが、実は数学のセンス=数式のセンスではない。
まあ、テストの点数が優れている者が、必ず頭の良い者だとは限らない、ってのと同じだと思ってもらえれば。だいたい両者は同一の場合が多いから、世間的にはそう思われているだけで。
本書では「存在問題」から「集合」「必要条件・十分条件・必要十分条件」等々の数学の論理の大本をわかりやすく説明する。数式はほんとうに一切出てこないので安心してほしい。数学的考え方を理解したいのなら、良い入門書だろう。ソ連や国鉄はなくなったが、数学の論理はいまだに現役だ。そうそう変わるものではない。
ただリニューアルした割には、おざなりのイラストを加えただけ。ソ連や国鉄への注もなし。その点であまり高い評価はできない。
ただ手に入りにくかった超常識の方法が簡単に手にはいるようになったのは喜ばしいことではある。
本書では、論理というものを日本人がいかにわかっていないかを説くが、そうだようなぁとうなずいてしまう。
当方、ある日おしゃべりをしていて、結婚についての話をしていたのだが、「結婚式の病めるときも健やかなるときも愛することを誓いますかっていう言葉は契約なのだ。けっしてロマンティックな言葉ではなく、私は夫(妻)が病気で寝たきりになったり、貧乏して食うに食われない生活になっても離れないことを創造主のもとで、契約します」という意味なんだということをさらっと説明すると、周りから引かれた。あまつさえ哀れみの目で若いんだから夢を持とうよとか慰められたよっ。
ちがうっつーの。あの言葉が契約っていうことは文面とキリスト教世界観を少し知っていればわかるじゃん。その行為の論理を知っているのと、夢とは関係ないよー。
ってなことを叫んでもムダなんだな、これが。日本においては論理を言うと冷たい人って思われるのだ。論理と個々人の感情は別物であるっていう考えがない。本書にもあるが、個人の人格と意見とは別のものという感覚がない。
あぁ、当方にだって感情くらいあるから。だから哀れみの目だけはやめて。
論理に働けば角が立つ。
情に論理すれば流される。
論理を通せば窮屈だ。
兎角に人の世は住みにくい。
おそまつさまでした。