スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

地に墜ちた日本航空

ナショナル・フラッグ・キャリアとして日本の空の王者であったJALが苦しんでいる。監査法人に甘い見通しを指摘され財務は資金繰りが厳しく、内部にあっては労働組合の強硬な抵抗。経営が危機的な状況にあっても派閥争いに終始する経営陣。なぜJALが地に墜ちてしまったのか。JALの設立から現在までをたどっていき、ANAや世界の航空業界と比較してJALの問題点、これからを検討する。はたして再びJALの翼が高く飛ぶことはあるのか。

日本の翼、再び飛び上がれるか

〇七年二月に発表された中期計画では金融機関から厳しい枠がはめられた。将来の可能性、公共交通機関としての使命感よりも、路線ごとの採算性を厳しくチェックすることが求められたうえに、対象路線は「なるべく多く」という漠然としたものではなく、「二桁」と明示された。JALはぎりぎり「二桁」の一〇路線を廃止するが、その実施の多くは「切りのよい」翌々四半期(一○ヶ月後の一〇月)からである。
国際線では地方空港発着の路線はほとんど廃止して地元の「JAL離れ」を招いているが、反面では、多額の赤字を生んでいるブラジル線は、ナショナル・フラッグ・キャリアとしての責務を理由に休止しない。ANAが路線ごとの採算性を厳しくチェックし、すべての路線で収支が引き合うよう徹底的に見直したのに比べると、まことに大らかである。

地に墜ちた日本航空―果たして自主再建できるのか 地に墜ちた日本航空―果たして自主再建できるのか
杉浦 一機 (2007/05/31)
草思社

この商品の詳細を見る

正直なことを言うと、本書を読むまでJALとANAの区別がついていなかった。飛行機乗らないので興味がなかったのだ。一度も乗ったことがないというわけではないのだが、いずれも人任せだったので飛行機会社の違いなんてまったく考えなかったし興味がなかった。何か違いがあるの?という感じであった。
そんなわけであるから、航空業界については本書ではじめて知ったようなものだ。JAL設立から現在までの流れが記述してあったので、私のような知識がない者でも特に止まることなくすらすらと読めた。基本的にはJALがどうしてダメになったのか、それを主にANAとの対比で述べていることが多い。
国内線のみだったANAが国際線に進出しJALと互角・それ以上の戦いぶりを示し、対抗するようにJALがJASと合併し国内シェアで優位にたとうとしたときもANAはコストカットなどの不断の努力でJALに打ち勝ってきた。シェアを伸ばすANAと、墜ちていくJAL。両者の違いを見れば、JALのどこに問題があるかは良くわかるだろう。

筆者が特に強調するところは2点。JALの大企業病である。社内での意思統一が難しく、トップが改革を行おうとしても、社内調整に手間取り非常に時間がかかる。つまりは意志決定、実行のスピードが遅いのだ。セクショナリズムがひどく、自分の立場を守るために膨大な資料を作り、しかもその資料については具体的なことは作った本人でしか説明できないという。部署によって出す数字に違いが多く、全体的な整合性がとれていない。部署が違えばまったくお互いのことを知らないという体制がまかり通っているとのことである。
もちろん、会社が大きくなってしまえば、縄張り争い等の問題はどうしても発生してしまう。だが、JALの場合、会社自体の存亡の危機だというのに、部門ごとの立場が重視され危機意識が薄いのは、ナショナル・フラッグ・キャリアだからという意識があるからなのだろう。自分たちが日本の空を支えてきた。その自信である。誇りを持つのは大事だろう。ただ、その誇りが、ナショナル・フラッグ・キャリアだから、国は自分の会社をつぶさないとの意識が根底にあるのではないか。親方日の丸というやつである。
だが筆者は言う。アメリカの例を見よ。アメリカのナショナル・フラッグ・キャリアとでも言うべきだったパンナムは航空自由化のあおりを受け倒産した。国際航空について影響力が強いパンナムはアメリカの大きな財産であったが、経営が行き詰まったパンナムをアメリカ政府は見捨て、市場に任したのだ。一昔前ならともかく、国がJALを絶対に見捨てない、などという保証がどこにあるのだろうか。

もう一点は社内の労組の問題だ。JALの中には機上職、地上職など多種多様な労働組合が存在する。それぞれが非常に強硬で、労働組合への根回しだけでも相当な苦労になるという。筆者はパイロットの給料を例に、航空自由化により、世界の航空業界はパイロット等の給料はできる限り押さえてコスト削減に努め、厳しい競争を生き抜いているのに対して、日本のパイロットは世界でもトップクラスの給料をもらっていながら、会社の状況の認識が薄く、非現実的だと非難する。
また、世界の航空会社と比べたときJALは社員数が圧倒的に多い。それは当然コスト面に跳ね返ってくる。 会社が潰れてしまっては給料どころではないはずなのだが、労働組合事態も親方日の丸のJALを国が潰すわけがないという意識を持っているのではないか。労働組合は会社の状況を冷静に見極めて、社内一丸となって危機に対応すべきではないかと著者は呼びかける。

本書の問題点は、結局のところ社内一丸となって危機に対応すべきという結論に落ち着くあたりからわかるとおり、ではJALがどう具体的に危機を乗り越えるべきかという疑問には明確に答えられていないことだろう。読んでいて、JALの悲惨な現状がわかるとともにそれに対する施策の弱々しいことを見るにつけ、いっそ一度潰した方がいいのではないかと思ってしまうのだが、著者の分析によると、潰して再建というプランも難しいとのこと。結局現体制か、銀行主導による経営再建しかないということになる。
日本有数の大企業であり、それゆえに身動きの取れなくなったJAL。このままずるずると墜ちていくままなのか、再び飛び上がることができるのか。JALの現状を知るには非常に有意義な本だった。

今後は飛行機に乗る際に、航空会社に興味が持てそうだ。


地に墜ちた日本航空―果たして自主再建できるのか
Amazonで購入
livedoor BOOKS
書評/ルポルタージュ
スポンサーサイト
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。