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黄色い涙

昭和43年10月。児童漫画を志すも、当時隆盛していた青年漫画にのめり込んでいく村岡青年。が、すぐに行き詰まり公園で一人タバコをふかす日々が続いていた。そんなとき公園で丁半ばくちに興ずる同年代の青年二人と出会い、自分の部屋に誘い、共同生活を始める。何かを求め、何かになろうとする、しかし“何か”がわからない青年たちの群像劇。

過去の捏造

「くどいようだ けど
本当にそれでいいんだね……」
「思いのこすことはないんだね
……
……
じゃ!」
「さょうなら
……
いやいいんだ送ってくれなくても……」

黄色い涙 黄色い涙
永島 慎二 (2006/11/22)
マガジンハウス
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どことなく懐かしい。と私が感じるのは間違いなく錯覚だ。作品の舞台である80年代は、私のとってはガキの時分の話であり、しかも私は作品世界とはほど遠い田舎の子どもであった。都会で自己というやっかいなものに苦しむ青年などとは縁もゆかりもない。だから懐かしいなどと感じるのは、おそらくテレビ等の影響だろうな。懐かしの画像とか作品とかで、これが懐かしんですよ、これこそが青春なんですよ、と繰り返し学習していくうちに自然と80年代というものに懐かしさを感じるようになったのだろう。
ま、私の場合は、昔風とういか事実昔の作品なわけだが、自己表現がどうとかを真剣に扱っている作品なんて、懐かしいをキーワードにしなければ読めない!といった自意識過剰のせいだろうけど。

何はともあれ、久々に読んだ永島慎二作品だ。正直復刊の話を聞いたときは、なぜ今さら永島慎二なのかと不思議だったが、映画化のせいであったか。久々といってもちゃんと読んだことがある作品は、実のところ『青春裁判』だけ。ただ、これにはかなりのショックを受けた。それまで正義のヒーローが活躍する小学生らしいマンガばかり読んでいたのに、唐突に(親父の本棚で見つけた)『青春裁判』ですよ。理解できるわけないじゃないですかっ!てな感じの衝撃を受けたのだけど、この作品の衝撃は今でも続いているような気がするな。今でも内容覚えているものな。
「小学生に青春なんてわからないだろうにね」
「わからないこそ、興味を持ったのだろうね」

この本を現代の役者で映画化か。どうなるんだろうね。出演を見ると、二宮和也、相葉雅紀、大野智、櫻井翔、松本潤とある。だって、原作は主人公(漫画家)が売れることで自分が書きたいことが書けなくなるんじゃないか、魂を売り渡すことになるんじゃないか、なんてことを真剣に悩むのだよ。編集者には、

「ハッキリいうとね
あんたが目指している方向ではこんご十年間は食えませんぜ
良心的すぎる……
売れないね……」
「ハァ売れませんか
……」
「あんた
自分が売れんことを願っているみたいにすら見えるのだが……ね」

なんてことを言われてしまう作品なのですよ。ねえ、大丈夫なのかしらん。

大丈夫なのかしらん。と心配しても広島では放映されないので出来を確認することができないので、どうしようもないのでありますが。DVD待ちかな。

ひねくれた感想になってしまったのは、本書をおもしろく読んでしまったから。でも、なんでおもしろく読めたか上手く言いあらわすことができないから。
普段マンガなぞ読まない父母が、この本だけは手にとっておもしろいと言うのはわかるのですよ。彼彼女らにとては、それこそ本当に懐かしいものでしょうから。
ガキの時分の衝撃ってのは今も残ってはいるけど、既に大人になってしまった私はもう大人のマンガなんていくらでも読んでるわけで、今さら読み返して衝撃なんて受けないわけで。とすると80年代への懐かしさ、なんて経験もしていない過去へのあこがれ・嫉妬なのかな、と思うわけですよ。

夢を求めて都会に出てきたけれど、その夢の現場を目の当たりすると、あれだけつまらなかった郷土での生活こそが自分にふさわしいものではなかったか、と真剣に悩む青年。その青年に対して

「たしかにくにはいいさ
しかしね かんたんに帰れないからいいんだよきっと」
「一時帰処ってのはいいんだが
一度でたものが再び帰ってくらすところではないと思いますよ
くにってのはね」

と諭す喫茶店のマスター。
こんな場面をさらっと書けるのがあの時代なのだろうと思ってしまうし、さらっと書けてしまう状況に憧れているのかもしれない。最近は読む私自身がひねくれたせいで、世の中のマンガはひねくれたものばかり増えてしまったような気がして。

過去への必要以上の憧れは、現実逃避に他ならないのだけど、よく考えたらマンガを読む行為なんてのはたいてい現実逃避だった。マンガを読んでいる間だけは幸せだよね。
なので、おもいっきり幸せな現実逃避をしましょう。


黄色い涙

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