古事記や日本書紀。本好きなら読んでみたいなぁ、と思える書だと思う。
ただ、本好きだからといって古典が読めるってわけじゃないのが問題なんだろう。
だいたい古代の書物だけではなく、ほんの100年前の書物でも現在流通しているのは現代語訳で当たり前という時代なのだ。古代の書物が読めない本好きがいたって当たり前と言ってもいいのではないだろうか。
で、何冊か古事記本を読んだのがしっくりこない。良書とされている本は、基本的な古典の知識が必要だし、平易な現代語訳してある本は内容も省略されてあるのか、読んでみてもおもしろくない。
やはり、古事記を読むには古典を勉強し直さないといけないのか、と思っていたところ本書に出会った。あまり期待していなかったのだが、非常におもしろかった。
まず、完全に現代語訳してあるので古典の成績が悪かった人でも読める。で、下手な子ども向け絵本みたいな省略もしていない。なまこの口が裂けている理由とか宇陀の水取たちの先祖が弟宇迦斯とかがちゃんと載っている。
神話を元に創作された二次作品を通してしか知らなかった神話の世界に、自分の古典の成績を振り返らずとも浸ることができる、軟弱本好きには嬉しい一冊になっている。
学問的に正しい訳かどうかは素養がないので当方には判断つきかねるのだが、古典教養がないけど記紀神話の世界に触れたいという方におすすめの本。