物語への責任
天国への階段を一緒にのぼることを約束した女に裏切られ、帰るべき故郷を失った男柏木圭一。彼は東京で成功し、若き実業家となった。力を得た柏木は、故郷を失うことの原因をつくった男に対しての復讐を計画する。だが、着々と準備を進める柏木のもとに差出人不明の脅迫状が届く。それは、柏木の許し難い罪を暴こうとするものだった。はたして柏木の復讐はどうなるのか。
そのなかに圭一さんの姿を目にしたのです。天国に昇る階段を前にして、たった一段をも昇れずにうずくまっている圭一さんの姿を‥‥
復讐の話が大好きである。
だから本初の上巻を読んでいる最中は興奮しながら読んでいた。
久しぶりに骨太の復讐話が読めると思ったからだ。
だが、読み進めていくうちにがっかりしてしまった。
途中から復讐話ではなくなったのだ。
私はそのうち、主人公柏木圭一と、その敵江成達也との暗闘が始まり、そこに謎の人物本橋一馬や桑田警部が絡んでくるのだと思っていたのだが、そんな闘いいっさいなし。
いつのまにか、復讐話が昔失った男と女の縁を取り戻すいい話になってしまっていた。
まあ、すごくいい話だとは思うし、これはこれでいいのだろうけど‥‥
前半読んで、期待してしまった私の気持ちをどうしろというのだ。
もっとぐちゃぐちゃとした昏い話を求めていたのに。
男って奴のどうしようもなさ、人のくだらなさ、こんなことをしても何にもならないとわかっているのに修羅の道を進んでしまう愚かさ、そんなものを期待していたのだが。
わかっている。
大多数の人は私とは違うということは。
みんないい話が好きなんだ。
救いようもない話なんて、誰も求めていやしないんだからな、このご時世じゃ。
私的には不満の残る一冊。
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