著者の岩根圀和は、アベリャネーダ作の(贋作)ドン・キホーテの訳者である。その経験を元に贋作ドン・キホーテとの対比を中心にして世に有名なセルバンテス作ドン・キホーテを読み解いていく。
ドン・キホーテといえば風車を巨人と思いつっこんでいく瘋癲騎士という場面が有名だ。
確かに有名だ。
だが、その場面は有名すぎるくらい有名なのだが、実際ドン・キホーテの物語全般を知っている人はどれくらいいるのだろうか。
実のところ当方もドン・キホーテといえば中世に流行った騎士道小説のパロディでスペインが舞台くらいの知識しかなく、ドン・キホーテ本編なぞ読んだことがないというのがホントのところ。
この本では、実在したドン・キホーテの贋作作品との対比を元に真作ドン・キホーテの物語をなぞっていくので、ドン・キホーテがどんな物語なのかを知るには役に立った。
ドン・キホーテって実際はどんな話なんだろ、と思っていても読むのはめんどくさいと思っている人にはおすすめ。
実は物語に語られているほど、当時スペインには風車がなかったとか、セルバンテスは一時イスラムの虜囚になっていたとか等々の豆知識も紹介してあって、トリビア的にも楽しめる一冊であるし。
ただ、贋作者の正体などの深いものを期待してはだめで、あくまでも贋作と真作の対比が中心です。ご注意を。