![]() | 冷食捜査官 1 (1) (モーニングKC) (2008/11/21) とり・みき 商品詳細を見る |
まさか冷食捜査官のみで単行本一冊にまとまる日がこようとは。
話は近未来。食料統制により安全に食うことができるのは合成食料のみとなり、それ以前の「自然食品」を取り扱うことは違法になった時代。それでも以前の自然食を求める人々は消えず、マニアの間では地下に眠った「冷食」を食することが最高の娯楽となった。
冷食をめぐるウラ市場が成立し、冷食は犯罪組織の主な収入源でもあった。事態をおもく見た政府は、食料統制を取り仕切る農水省に冷食捜査を専門とする部署を立ち上げ冷食取り締まりを強めていくのだった。
まあ、そんなストーリはともかく全編ギャグです。とり・みきお得意の理数系ギャグはこれでもかと濃縮され、ハードボイルドチックなストーリの中にちりばめられる。
今年一番楽しめたマンガ単行本。
1巻とついているからには、2巻も出る予定あるんですよね、と期待してしまう。またモーニングでも、イブニングでもいいから、描いて欲しい。なので皆さん単行本買ってくださいな。
![]() | フラット革命 (2007/08/07) 佐々木 俊尚 商品詳細を見る |
冒頭で著者が毎日新聞の記者であった時に経験した新聞とネットの違い、より正確に言えば報道というものを独占してきた新聞(に代表される大手メディア)がネットをどうとらえているか、から本書は始まっている。
大手メディア対インターネットという対立軸が生まれたような昨今であるが、本当にそんな対立軸があるかどうかは別にして、インターネットに係わるメディアを語るときにこの対立軸で語られることは多い。本書は、そんなメディアとしてのインターネットを主題として、毎日新聞のネット君臨問題等のネットとリアルが関わった事例を扱い、mixiやブログなどメディアとしてのインターネットの可能性と問題点を挙げていく。
読者としては、ネットに親和的な人ではなく、むしろ従来のメディアに親しい人たちが向いているかなと思う。ネットくらい知っているがネットの可能性となると懐疑的にならざるをえないといった人なんか特に。
まず著者が従来メディアである新聞の記者だったこと。その記者時代の話から始まり、毎日新聞が大々的に行ったネット批判キャンペーンと従来メディアに親しい人にとって入りやすい題材が並んでいる。第二章での出会い系にはまる女性についても従来のコミュニティーの崩壊と境界性人格などネット論だけではなく社会問題に関心がある向きにも興味深く読める分析が行われている。最終章では自らも関わったことのは問題での著者自身の失敗反省が書かれており、これからネットに関わる場合のケーススタディになっている。
メディアとしてのネットを語る場合にはぜひ読んでおくべき一冊だろう。
![]() | 巨娘 1 (1) (アフタヌーンKC) (2007/12/21) 木村 紺 商品詳細を見る |
本屋で見かけ即購入。唯一定期購読しているマンガ雑誌がアフタヌーンなのであるが(でかいので立ち読みするのがめんどい)その中でもかなり楽しみにしている連載作品である。隔月連載なのがほんと悔しいぐらい。
著者の前作『神戸在住』も悪くなかった(というよりかなり良作)のだが、いかんせん自分には叙情的すぎた。ああいう作品読むと生まれてすいませんと謝ってしまいます。
その点巨娘はコメディータッチなので私にも安心して読めます。これぐらい肩の力が抜けているぐらいがいいよな。でも作品のスローな流れは前作と変わらずなので、前作ファンも読んで問題ないです。
作品は、焼鳥屋店長にて身長181cmの巨娘ジョーさんを中心に話が進んでいきます。生ビールの配送が遅れれれば本部から生樽担いで店まで歩いていきますし、50kg超える荷物も片手でひょいです。ええなあ、オレも180cm欲しかった。
自分の店焼鳥屋鳥吉はジョーさんをはじめ女性のみ。ハードな居酒屋家業なのに大変と思いますが、ジョーさんはもちろん配下(配下?)もパワフルなので問題ありません。
1の子分トオルさんは司法試験合格というすばらしい頭の構造を持ちながら中身は完全に吉外というお人です。得物は厚口の中華包丁とトイレのキュッポンです。得物?
2の子分ポン子さんは、トオルさんの紹介で働き始めた下働き担当の人です。ちなみに紹介の仕方は、てんで使えないバカなので、根性たたき直してやってくれよ、です。トオルさんひどいですね。本名は幕の内ポン子。そういうキャラです。
3の子分はサチさん。鳥吉の良心担当です。サチさんもトオルさんの紹介で働き始めた人です。そつない働きぶりでジョーさんに認められ一週間でホール責任者に。ちなみに先に入ったポン子はまだ見習い扱いでした。サチさんのお話である第六話は、前作ファンには一番好かれるんじゃないでしょうか。
この作品良いところは、出てくる人物にダメ人間が多いということでしょうか。ジョーさんの前カレとか、3号店の金具志さんやその3号店の常連さんとか。木村紺の作風で書かれるダメ人間は、どこか憎めないのですね。彼らがほのぼのとした空気を生み出している。読んでて一番笑えます。
ぜひ売れて欲しい一冊です。
![]() | 高校野球が危ない! (2007/07/31) 小林 信也 商品詳細を見る |
第89回全国高校野球選手権大会は佐賀北の劇的な逆転勝利で幕を閉じた。
県立高校が優勝したことを喜ぶ高校野球関係者は多いのではないか。西武ライオンズの裏金問題から発展した特待生問題があったためだ。
甲子園常連私立校では当たり前に行われていた特待生制度が日本学生野球憲章に違反しているとして一時話題になった。この特待生制度は、隠されていた問題でも誰も気づかなかった問題でもない。誰もが野球憲章に違反していることは知っていたし、裏ではどぎついことをやっているところがあることも周知の事実だろう。
問題になったとき良く言われたのが、他のスポーツでは当たり前に行われていることだ。なぜ野球ではいけないのか、ということだった。もちろん同じくらい高校野球の精神を汚すけしからん行為だという声もあったが。
メジャーなスポーツで活躍すれば学校の知名度があがり、校内の雰囲気も盛り上がる。優秀な選手であれば金がかかっても獲得したいという高校・大学は多いし、選手の方も恵まれた環境と金銭的負担の軽減を得られる利点がある。ただ、高校野球ではダメなのだ。野球と引き替えに金銭的援助をすることは野球憲章ではっきりと禁止されていた。(ちなみにこの憲章は高野連に加入しているところのみに影響があるので、高校とは関係ない大学では援助は問題なく行われている)
だが、高校スポーツで何がメジャーなスポーツかといえば高校野球以上のものはないだろう。甲子園となれば毎試合テレビで全国放送される。全国紙がかなりの紙面をさいて特集する。そんな高校スポーツが他にあるだろうか。学校の知名度をあげようとする高校が野球に力を入れるのも当然だろう。高校は甲子園で知名度をあげることができて満足、選手は生活の不安なく野球に打ち込めて満足。表面上誰も損をしていないので、特待生の何が悪いの?という意見がでるのも当然だろう。事が大事になった後、特待生問題に厳しく対応すると言明する高野連に、対応が杓子定規すぎる、時代に合わせた体制をという反感はかなりあった。
本書は、特待生問題を主に現在の高校野球の現状を書いたものである。草思社の本らしく編集がぐだぐだ(というか編集作業を放棄している)なので内容も意見も一貫性がなくまとめるのが困難なのであるが、総体としては世間の悪評から高野連を弁護する意見が多い。
そこにあるのは、高校野球のあるべき姿として、アマチュアリズムこそが正しいという主張がある。それゆえ、冒頭で昨年の甲子園でヒーローとなった斎藤佑樹投手がいた早稲田実業への批判から始まっている。相手投手のリズムを狂わせる効果があるのかもしれないが、変則的な打法が多くて、そのままでは大成しそうにないのだがきちんと指導する者はいないのか。通常ではありえないラフプレーをしていながら悪びれない選手、それを許容しているかに見える監督。斎藤投手に対しても、優勝後の宿舎でワイドショーのインタビュー時にある商品ロゴが入ったTシャツを着たまま出演し、高校球児としては軽率な行為ではなかろうかと疑問を呈し、「コントロールがいい」と思われている斎藤投手は実は死球が多く、ぶつけても謝りもしない。打者からすれば、いつぶつけられるかわからない投手はさぞ打ちにくいだろう。早実は「とにかく勝てばいい」の姿勢で高校野球をやっているのではないか。そのようなチームがマスコミに大きく取り上げられ、人気者になっている現状に危機感を著者は感じているのだろう。
著者や昔ながらの高校野球に愛着を感じる人は、アマチュアリズムこそが高校野球のあるべき姿なのだろうが、無理筋な話ではないだろうか。
著者は、高野連を悪い点を挙げながらも、アマチュアリズムの守護者としての高野連を最大限評価しているが、マスコミ等の「外部」に高野連が高校野球の守護者として居丈高に振る舞えるのは、ひとえに人気コンテンツである甲子園を抱えているからだ。他のアマチュアスポーツなら毎回頭を悩ませる大会運営費を会場収入でカバーできる高校野球。人気コンテンツを抱えるからこその高野連であるが、人気コンテンツであるがゆえに選手や関係者は実入りを期待するし、勝てば官軍と思う者が出るのも当然だろう。
アマチュアリズムの理想に適った高校野球は、人気コンテンツとして有り続けられるのだろうか。すでに子どもたちにとっては野球よりもサッカーの方が親しいスポーツだろう。そしてサッカーは、子ども自体からプロががっしりと介入し、学校が優先的援助を行っても何ら問題がない体制だ。
現場の生の声や自身が実際に見た試合からの評論など興味深い情報が多い有意義な本なのであるが、では今後の高校野球はどうすればいいのか、については有効な答えはわからなかった。それは本書で豊富に載っている現場からの声を参考にして読者が考えるべき問題、ということなのかもしれない。
自分の購買行動を考えると、ネットをかなり頼りにしてるよな、と思う。
ちょっと高い買い物の場合、店頭で現物を確認→よさげなものを選定→帰宅後ネットで調べる。という行動パターンができあがっている。ま、ネットの評判がいいから即買うわけでもなく、ネットでの評判が悪いから買わないわけでもないんですが。たた、店の店員の説明だけではなくネットでの評判も一応チェックしないと損した気になるんですよね。気だけなんで、大した意味があるわけじゃないのですが。
あれか。知人が楽天で詐欺にマヌケにもひっかかり(秋葉原OG商会)、事の顛末を聞きゲラゲラと一通り笑ったあとで、なんでそんなとこで買うたんと聞くと安かったからまあいいかというのと、騙されたら日記のネタになると思ったと自嘲気味につぶやいたものでした。
総表現社会とかなんとかよくわからん社会が訪れてからこっち、ひどい商品をつかまされたショックから立ち直る方法として、友達にグチるという以外に個人サイトでネタにするというのもあるのか。
まあ、気持ちはわからんでもない。物を買って、しまったと思うのは自分で、悔しいのも当然自分だ。いろいろと後悔する。やはりもう一つの商品の方にすればよかったか、もっとしっかり店員に聞いていれば、もうちょっと冷静になれていれば普段こんなもん使わないのはガキでもわかるだろうに等々。そういった後悔の中に、買う前にネットで調べておけば、というのが加わったのだ。必須ぐらいに。
ある程度の対価が必要となる商品の購入時には、あとで後悔したくない納得して購入したい、という気持ちが非常に強い。だから、ネットのクチコミを調べるのは、自分自身を納得させてすっきり買い物したいからというのもあるよな。
もちろん、これは私の話で、店員やカタログなんかよりネットのクチコミ最強と信じている人もいるだろう。私だって、まったくネットのクチコミを信用していないのなら、自分自身を納得させるための材料なんかにはしない。
そういったネットのクチコミをマーケティングにどう生かしていくか、というのが本書のテーマ。
80年代と現在の消費者の購買行動の違いをあまりにもわかりやすすぎる例題で示し、ネットのクチコミを語る時には非常に有名な波乗りジョニーを紹介する。ネットに対して懐疑的な人にプレゼンする際にそのまま使えそうな入りだ。
次に具体例として、デジャヴュ ファイバーウィッグと、そのクチコミの現場として@COSMEを紹介する。広告が非常に重要な化粧品だけに、成功例として説得力がある。
ネットのクチコミの力を説明した後は、ネットのクチコミのメカニズムを解説する。影響力のあるクチコミの発信者「インフルエンサー」を中心に、クチコミが広がっていく課程と効果が述べられていく。ケーススタディとしてあげられているのはSONYのVAIO type Uだ。これが出たとき私もつい買おうかなーと思ってしまった一品。かっこいいんだよね。SONYはマーケティングがすごい起業だと思うのだけど、taype Uを売り出すときにどれだけネットでのクチコミを意識していて、どういう施策を行っていたのか。PC等のデジモノはネットとの相性が良い。ブロガーに対してのプレゼンテーションを開く、担当者がblogでtype Uについて書き情報提供を行う。その内容がブロガーの興味を引くものであれば、自身のブログで記事にし、その記事を見たブロガーがさらに記事にするという連鎖がおこる。これがネットのクチコミの威力である。
ネットに興味がある人なら誰が読んでもおもしろいだろうが、一番の良い読み手は、うちもいい加減ネットでの広報活動に本腰を入れたいな、と悩んでいる担当者だと思う。
巻頭対談は松尾スズキと北野たけし。映画に関わる話が多し。それにしても宮藤官九郎が『キッズ・リターン』に出ていたとは知らなんだ。
何気なく読んでいたら吉田豪のインタビュー物が。好きなんだよね、吉田豪。
ゲストは麻生久美子。名前はどっかで見た憶えがあるなあ、と思ったら『時効警察』出てた人か。俳優の名前とか全然憶えられんからわからんかった。
内容の方は、あいかわらずだけど、おもしろすぎる。吉田豪のインタビューはよすぎる。
家が貧乏でザリガニ食ってたとか衝撃告白だよ。しかも、ザリガニはご馳走ときたもんだ。どんだけ。
最近ザリガニなんて見ないな。というか、ザリガニってどっちかというときたない川にいるもんなんだけどな。よく勘違いされるけど、蛍も本当の清流には住まない。どぶ川はむりだけど、少し汚れた川じゃないと蛍ってのは生息しなかったりする。というのも私はガキの頃ザリガニ釣りなんてやった記憶がなくて、それはあんまりザリガニがいなかったからだろうな。つまり、麻生さんは田舎育ちらしいけど、うちはもっと田舎だということだな。どうでもいい話だった。
他にも、幼少の頃叔母に包丁を振り回された話だとか、西田ひかるに憧れて同じところにホクロを描いたとか、体操服で学校登校して本当に石を投げられたりだとか、いやまあ、すごい話が次々と。
端から見るとかわいそすぎる半生なんだけど、本人いたって気にしてなさそうな話しぶりがまたいい。もちろん役者として現在大活躍みたいで、『時効警察』と『夕凪の街 桜の国』で役者として何かをつかめたようなので、今週末から放映される『夕凪の街 桜の国』はぜひ見にいこうっと。
後、弟の結婚式で十年ぶりに出会った父親に「お金貸してくれ」と頼まれる話も最高です。
漫画家残酷物語の続編。なのかは知りませんが私の中では続編。
なんというか、またもやあり得ない漫画家の日常が描かれているのだけど、ただのギャクマンガやと笑えとばせないなにかが、このマンガにはある。何か怖い。
読み終えて、表紙絵を再び見るとさ、その唐沢なをき(自画像)の見上げてくる目線がさらに怖いんだ。マンガ家って業な職業屋やね。
![]() | まんが極道 1 (1) 唐沢 なをき (2007/05/25) エンターブレイン この商品の詳細を見る |
ダンカンは常に巡回先に登録されているサイトで、更新を毎回楽しみにしているサイトだ。
それげめでたく書籍化。いや、めでたい。
![]() | ぼく、オタリーマン。 よしたに (2007/03/15) 中経出版 この商品の詳細を見る |
実のところ内容に関してはそれほど期待してなかった。巡回先のサイトが書籍化されれば、おーすごいと思い購入するが内容に関してはWeb上で一度読んでいるものであり、まあ、こんなもんだろうな、と読み終えるのが常だったからだ。
しかし、本書は予想に反して非常におもしろかった。もちろんサイトを見れば見られるものがほとんどなのだけど、一冊にまとめて読むと、また新鮮なおもしろさがある。それは、私が本を読むという文化に慣れており、PCの画面で文書、マンガを読むのがいたしいせいだとは思うが、こればっかりはどうしようもない。実際PCで文章を読むのがめんどくさくて、コピーペースト→ワープロソフトで整理→プリントアウトで読んだこともある。本という文化に愛着があるのですね。
内容も本という形態に向いているだろう。著者も言っているとおり基本1ページ完結のマンガであり、好きなところから読んで好きなところで読み終わることができる。部屋で何もすることがなく、ぼーと寝っ転がったときにふと手にとって読み始めるのにぴったりだ。その点、Webサイトを見るためにはPCを立ち上げねばならず、その点でPCより本形式の方が適している。
マンガは難しいが(最近は画面が大型化しているから大丈夫か)文章のみなら携帯でってのも暇つぶしに向いている。最近気づいたのだけど、長文って携帯からの方が読みやすい。
倉阪鬼一郎の活字狂想曲と一緒で、会社という世間になじめぬ者にとっては非常に共感できる内容だろう。飲み会でひとりぽつねんと刺身おいしーとか。飲み会で人生あきらめずに彼女作ろう!と励まされたりとか。同期との懇談の場で一人本を読んでいるとか。隣の机からの国境侵犯が気になったりとか。とかとかとか。
読んでて非常に楽しいのですが、同時に目から水が溢れてくるのは何ででしょうか。
オレってサラリーマン向いてないっていうか、働くってこと自体向いてないよな、と日々うじうじしている人には楽しく、痛く?読めるマンガです。おすすめ。
![]() | 硫黄島栗林忠道大将の教訓 小室 直樹 (2007/02) ワック この商品の詳細を見る |
映画『硫黄島からの手紙』で広く名が知られることになった栗林大将(一般的には中将として知られる)についての本。栗林大将の硫黄島での奇跡的な敢闘が、その後のポツダム宣言等の日米関係に多大な影響を与え今日の復興繁栄した日本の礎となった。そのことを忘れた現代の人々に対して硫黄島で行われた敢闘を紹介し、硫黄島を忘れるなと呼びかける。そして、なぜそのような悲劇的な敢闘を行わなければならなくなったのか、日本軍の宿痾を分析し、現代にも通ずる日本の組織の欠点を述べていく。過去の大戦から学び、これからに生かしていくことが、あの硫黄島で散っていった英霊に対しての供養であると言うように。
小室直樹の本はたいていチェックしているのだけど、これは知らんかった。本屋で見かけ即購入。
大東亜戦争に関する考察に関しては他の小室直樹の本とかわらないが(大東亜戦争、こうすれば勝てた とか)硫黄島の方はくわしく知らなかったのでおもしろく読めた。
軍人としての東条英機や山本五十六をボロクソに言う著者がこの栗林忠道大将だけは手放しで褒め称えている。(海軍では山口多聞中将を大絶賛している)ひとえにそれは、栗林大将が、規則慣例を守ることでは役所の中の役所である軍で前例に縛られることなく、独自の戦術でアメリカ軍に対抗したからだ。だからそれ以前の戦場であっという間にアメリカ軍に追い払われていた日本軍が、硫黄島では奇跡的な敢闘をしえた。著者が、栗林大将が中部太平洋方面軍事司令官に任命されていれば、と悔やむゆえんである。
本の後半では、ではその優秀な栗林大将が中部太平洋方面軍事司令官になぜ任命されなかったのか、同じく海軍の俊英山口多聞中将が「最も連合艦隊司令長官にふさわしい人物」と高い評価を受けていても、ついに最後まで連合艦隊司令長官になぜ任命されなかったのか。絶対に死守すべき地と硫黄島に送り出され、自らも死守すべく現地に赴いて兵と最後まで闘う覚悟を決めた栗林大将が、頼りにしていた航空船隊の壊滅を知らなかったのはなぜか。
そこに現代に通ずる日本の社会構造を見いだしていく。
歴史に学ばなければ、また同じ過ちを繰り返す。
硫黄島のことをさわり一遍のことしか知らなかったのは不覚。わりと歴史は好きなはずなんだけどな。少しずつ学んでいこう。
![]() | デカスロン 1 (1) 山田 芳裕 (2007/03) 小学館 この商品の詳細を見る |
へうげものの影響で、デカスロンまで手を出してしまった。いや、文庫版が出ると聞いてつい。 前は、この作家の過剰さが苦手でデカスロンは一読してやめてしまったのだけど。今読むと全然気にならない。あれだなあ。自分は歳とると細かいことは気にならなくなるタイプなのだろうな。 良かった。細かいことばっかり気になるタイプより幸せそうだ(自分基準)。
なのでメモ
古本屋(大崎詣ネコプロトコル)
本を古本屋に売ったのはいつのことだったか。たぶん、引っ越す前に大量に整理したのをブックオフに引き取ってもらったのが最後だったはずだから、もう五年も前か。以降たまるばっか。そろそろ整理しなきゃな、と思っていたら最近の古本屋はamazonで値の説明をするのか。ちょっと衝撃。
ま、東京圏だからだろうけど。広島ではこんなことはあるまい。アカデミィ書店でamazonがねーなんてやりとりは聞いたことがないしな。
しかし、私が古本屋に抱いていたイメージが急速に崩れさったエピソードだ。何をいまさらなんだろうけど。
![]() | 謎の彼女X 1 (1) 植芝 理一 (2006/08/23) 講談社 この商品の詳細を見る |
植芝理一は変なマンガを描くな、とアフタヌーンを買う楽しみのかなりの部分を占めているマンガ家だ。実際のところ、ディスコミュニケーションを読みはじめたのは連載途中だったので一読後さっぱりわからなかった。不思議と思い再び読みかえしてみたがさっぱりわからなかった。もちろん続き物を途中から読みはじめるのだからわからないのが当たり前だが、普通読んでみればストーリーはともかくとして、これはどういったタイプの物語なのかくらいはわかるはずなのだがそれさえもさっぱり理解できなかったのだ。
だが、ちょうどその時の自分の気分もあったのだろうが、わけわからなさに引かれてそのまま毎月読み続けた。単行本を揃えれば良かったのだろうが、気にならないおもしろさだった。
結局わけわからないまま連載は終わり、夢使いが新連載として始まった。こちらも不思議な作品だったが前作ほどわけわからなくはなかった。ま、そりゃ第一話から読んでりゃ理解できるか。楽しく読んでいたのだが、人気がなかったのか消化不良で連載は終わってしまった。無念。
それで現在は謎の彼女Xが連載中なわけだ。実は前二作にくらべて好きじゃない。や、おもしろく読んではいるのだけどね。
植草理一は、男の妄想(別に女の妄想だっていいのですが)を衒いもなく書くのがうまいよなーと感心しておったのです。でも今回はあまりにも直球過ぎる。
よだれを垂らして学校で熟睡する女の子。そしてその子とその子のよだれを通じて結びあう特別な関係。しかもその子は言動が謎で不思議ちゃんであり、実は照れ屋であるという……
先生、ストレートすぎます。確かに読んでて楽しいのですが、確実にマンガを読むには歳をとりすぎた男の何かを痛めつけていきます。凶悪すぎる。
まあなんだかんだ言っても単行本化されたので即買いしたのですが
そういや先日買ったメカビは植芝理一のインタビューが載っていたのが一番良かったな。すごくおもしろかった。
![]() | へうげもの 3 (3) 山田 芳裕 (2006/08/23) 講談社 この商品の詳細を見る |
へうげもの3巻を読む。
なんとなく前巻までの勢いがないな。と感じていたら同様の感想が
「へうげもの 3」 山田芳裕
なるほど。確かに長益の立ち位置に左介がいたらもっとすっきりとしていたかもしれない。ま、すっきりとするのが良いわけではないけど。
逆説の日本史13巻とともに英傑の日本史を読む。簡単に読めるのでいいね、このシリーズは。
主から天下を奪い取ったという点においては秀吉も家康も同じなのに、こうも評判が違うのは何故か、という視点はおもしろい。確かに。以下英傑の日本史から参考に。本が手元にないので原文わかりません。
正直この本読むまで秀吉が織田信孝とその母(つまり信長の妻)を殺しているのを知らなかった。まあ、信孝は信雄に殺させた格好だけど。が母の方は秀吉が信孝(と自分に反対する者)への見せしめとして殺している。
豊臣家から天下を奪った家康のイメージが最悪なのに対して秀吉がそこまででないのは確かに不思議だ。秀吉の人たらしの才覚によるのか豊臣家が無念にも滅びてしまったからなのか。
へうげものの家康は人格者でそれこそサムライと呼ぶべき人物になっていて、たいてい狸爺のイメージで登場する従来の家康像とはほど遠い。しかし、あんがい当たっているのかもしれない。
関ヶ原前に大谷吉継が石田三成に「君は態度が横柄なのでみんなから嫌われているが、一方家康殿は、天下にならぶ者はいないほどのお方なのに下々の者に対しても腰が低く、慕われている。とてもかなうわけがない」云々のことを言うてるみたいで、外面上非常にいい人だったらしい。まあ、このころは家康晩年の話なので老獪家康としての処世術だったのかもしれないが。
後、信長への忠義というのも本当のように思える。快進撃を続ける信長とは対照的に武田の猛攻を耐えしのぐ役割だった織田との同盟は、そこまでうまみのあるものではなかっただろうに最後まで裏切ることはなかった。
単純に狸爺家康イメージで家康全てを語るのは難しいのかも。ただへうげものの家康が完璧とはとうてい。あそこまで人を信じられる人だとはとうてい……家康の幼少期を考えると。うーん、やっぱり嫌な奴家康像が一番なのか。むー。
仕事しないことではマンガ会屈指と評判の小原愼司がアフタヌーンで連載をはじめるらしい。施療院島
え、二十面相の娘連載終わったんですか?と思ったら第7巻も8月23日に発売とのこと。(ちょいと調べたけど最終巻ってわけじゃなさそう。けど連載はクライマックスらしい。フラッパーチェックしてないんでわかんね)
単行本発売と連載開始が同月って。大丈夫なのか。普通に心配になっちゃう。
とはいえ、アフタヌーンで長年読んでいた作品が連載終了してしまって、買うのやめようかなと思っていたところだったんで、これは朗報。とりあえず連載が載っている間は買い続けることにしよう!
現在楽しみにしているアフタヌーン連載作品
こう書くと多そうだけど、どうしても毎月読みたいってのは少なくなった。楽しみにしているマンガの中でもラブやんとおおきく振りかぶってくらいだろうか。 あと読んでるのは『るくるく』『ハツカネズミの時間』『もっけ』あたりか。
まあ、一番好みのマンガが多い雑誌であるのは間違いないんだ。毎月欠かさず読んでいる月刊誌はアフタヌーンと月刊マガジンだけだし。
おもしろそうなので参加。というより自分が何の本を読んできたかの確認か。ただルールが厳しいので現在熱中しているマンガはほぼ入っていない。
- 連載が終了しているもの。
- 連載中のものは20巻以上発行されている物
- 現在でも比較的手に入りやすい、読みやすいもの。(古本屋とか 漫画喫茶とかで手に入る 読める)
- 最低ラインは50個です。(100個選べない人用)
よいルールです。どうしてもマンガは旬のものが強いですから、20巻以上のしばりがなければ現在連載している(=現在熟読している)マンガばかりになる予感です。事実、これもあれも20巻いってないなと途方にくれました。当方記憶力が鳥並なので昔読んだマンガを覚えていません。
順番に意味はなし。思いついた順。
全部にリンクを張ろうと思いましたが力尽きました。だいたいおすすめマンガというより自分が読んできたマンガ一覧になってしまった。まあ、明日時間があれば手直しを。本棚から取り出したマンガを読むのに時間をかけすぎました。やはり本棚前に長時間いるのは危険だ。
時かけおもしろかった話を書こうと思ってたのに。
すべてにリンクを追加。ふー。
ちょっと手直ししたけど、基本的に自分が今まで読んできたマンガの羅列ってのは変わらず。もっと読んでると思うんだけどなぁ。いまいち思い出せない。
リンク先の評を見て、見よう見ようと思っていたロード・オブ・ウォーをようやった見ました。しかし、見ようと思ったのが1月。実際見たのが7月とは。
10日ぶりの更新でおそらく死にましたのだから、六ヶ月かかって映画一本ようやく見る私は、腐臭がしまくりです。
昔、自分は何かをすべきだ。って思ってたころの私なら、怒りなり、自分の情けなさなり、なんらかの憤りを覚えていたのだろうけど。ただ今の私は、普通におもしろいとだけ感じる人間になってしまいました。
なってしまいました、ではなくて、それは私の選択した結果なのですけどね。
![]() | カラシニコフII 松本 仁一 (2006/05/03) 朝日新聞社 この商品の詳細を見る |
カラシニコフの続編が出てたので、即買い。
今回は、中央アジアや南米に足を広げ、高い視点で語られています。
コロンビアで流通する中国製AKノリンコ。
AK(カラシニコフ)のライセンス生産はとっくに切れてて、正規に生産する権限があるのは、AKの開発者であるミハイル・カラシニコフ氏が所属するロシアの会社だけなのですが、各国とも無視して生産しているのが現状。中国でAKを生産しているのが北方工業公司で、アメリカの銃規制対策に開発したのが中国製AKノリンコ。アメリカが自動小銃の販売を禁じたため、自動連射機能を制限し、スポーツ用として売りだしているのがノリンコだ。が、コロンビアで使われているノリンコは、簡単な改造で自動連射機能が回復されており、通常のAKと何らかわりがない。ちなみに著者は北方工業公司に取材を申し込んだのだけど、なしのつぶてとのこと。
で、中国でせっせと作られたノリンコが銃に甘いアメリカにわたり、そこからコロンビアなどの南米へ密輸というルートということだ。ちなみに銃の代金の半分は麻薬というのが相場らしい。
ひどい話だが、さらにひどい話なのは、私がこの本を読んでもっとも感心を持ったのが、AKの開発者であるミハイル・カラシニコフ氏が、自分の開発した銃とそれが生み出した現状をどう思っているか、ということなのだ。襲われ少年兵にされる子どもたちや貧困のためゲリラに入りAKを手に人を撃つ人々より、技術に罪はあるのか、なんてどうでもいいことの方に興味がいってしまうのは、われながらひどい。
私が本を読む理由を考えると、いいフレーズを使いたい、というのがある。つまりは、本で、これは使える!という文章、論理を採取して、さも自分のもののようにして他人に語りたい欲望だ。ただまあ、これは語ってしまった相手もその本を読んでいると、けっあの本からパクりやがったなとバカにされてしまうが。だから使う前は相手がこの本を読んでいるかどうかを探る必要があるから、結構気をつかう。それにワンフレーズのために本を一冊読むのはコストパフォーマンスが悪すぎるし。 本を読むくらいなら自分でいいフレーズをひねり出しなさいよ、といったところなんだろうけど、いかんせん私の頭が悪すぎる。
で、今はネットがあって、いいフレーズさがしはネットの方が主になったのだけど。
いまの森田にはハチミツのにおいもクローバーのオーラもない
なんていうしびれるフレーズを見つけてさっそくつかってみたのだけど、よく考えたらネットは本以上に相手が読んでいるか読んでいないか判別がつきにくいものであるよな。
mixiだと読者層の把握が簡単そうで、いいフレーズ採取には良さそうだ。あー、でもリアル友人もmixi交友録が似ているという可能性があるな。あとmixiにいいフレーズがあるかどうか。そもそもがmixiのアカウントを持っていないのでさっぱりわかりませんが。
ま、一番の問題は、近年人付きあいが悪くなる一方なので、いいフレーズを勝ち誇った顔してしゃべる知人がいない、ということだな。
リンク先にて
京極夏彦さんの「姑獲鳥の夏」のトリックに「アホかー!」と本を壁に投げつけた人は大勢いるでしょう
との記述を見て、あーそうなのかぁ、とデスクトップ前でうなってしまった。
いや、この作品大好きで大学時代に出会ったときの衝撃はいまだに忘れられない。寝る前にちょっとだけ読むつもりが止まらなくなり朝まで読み続けそれでも読み終わらなかったので、朝一の講義中まで読み続けてようやく読了した作品だった。それまで読書というものをあまりしてこなかった私にとっては、一晩中読み続けた本というのは衝撃的でした。
読みはじめた当初は、この蘊蓄すげーおもしろいんだけど、いつになったら本編始まるんだろうと思っていましたが、最後まで読みすすめて最初の蘊蓄自体が物語を構成する骨子になっていたのだと気づいて、やられました。最初の蘊蓄語り自体がトリックだったのだなと、読み終えて講義中の机に突っ伏して眠りながら幸せな読後感に包まれたものでした。
その後、少しずつ本を読むようになり、ミステリ作品も読みました。ミステリは得意なジャンルではないのであまり読んでいませんが。それで、京極さんの作品は「ミステリ好きを自認する人」にとってはあまり評価されていない作品なのかなぁと頭の中でぼんやりとは考えていました。いましたが、自分の好きなものっていうのは盲信するんでしょうね、心の根っこのところでこの作品は誰でもおもしろいと思っている、という根拠のない思いこみをしていました。そのことをリンク先の記述を見たときに自覚したんですね。盲信してるものってのは普段意識のうえにはのぼってこず、無意識の中にひそんでいるのでしょう。それは、外部の具体的な形を持ったものを見たとき、意識のうえの理性的な考え方と無意識からのぼってくる感情のズレによって自覚させられます。
私は自分のことを一歩引いた視線で物事を見てる人間だと思っていたけど、その実自分の好きなもの信じているものにはとことんあまいのだ。なんてことを考えてしまいました。
本の内容としては、ペストや梅毒当の感染症が(主にヨーロッパの)歴史にどれだけ影響を与えたかを序盤で述べ、感染症は人の社会に大きな影響を及ぼすものであり、我々にとっても深く考えなくてはいけないものだと説く。本書後半では鳥インフルエンザに関することに言及し、これが社会全体に多大な脅威を与える可能性が高く、早急に対応していかなけらばならないと結論づける。
鳥インフルエンザは興味を持っていたのだが、それは疫学についての興味ではなく、畜産関係によるものが大きかった。だいたいに文系な私では、ウイルス学とか理解できないし。どうにもアルファベットとか数字がならんでいるウイルスの説明見るだけでダメだ。
本書は私の好きな歴史という観点から書いているのでこれなら読めるかな、と手を出したものである。予想通り読めた。
著者の肩書きである国立感染症研究所ウイルス第三部研究員というのを考えると、本書の目的は鳥インフルエンザの脅威の啓蒙なんだろうなー、と思う。や、それ自体は別にどうとも思わないのだけれども、どれだけ効果あるんだろうなーとは思う。これは新書とかそんな感じの本読んだときにいつもおもうことだが。
ま、少なくとも私には役に立った。あれに罹ったら鳥全部処分しなくちゃいけない、人に感染したら死亡率が高いくらいの知識だったんで、新型インフルエンザは抗体を持つ人がいないのであっという間に感染するとか、今まで世界的な大感染を起こしたスペインかぜなどのインフルエンザは、実は毒性が低い型で、今回話題にあがっている鳥インフルエンザ毒性が非常に高く、この毒性のまま鳥インフルエンザから人インフルエンザに変異した場合の被害は過去の大流行よりも甚大になる可能性があるとか、勉強になった。こういった知識は少し調べれば手にはいるのだろうけど、頭に入んないのね。理系的な文章苦手だし、専門用語多いとそれだけで引いちゃうし。その点本書はとっかかりに私の好きな歴史を使っているのですいすい読めた。歴史好きで鳥インフルエンザに興味があるって、そんな人間が私以外にいるかどうかは知らないけど、もしそうなら楽しく読めると思います。